適切な距離感3

前回の続き。適切な距離感が取れない医者というのは他にも居る。

 

 

自分自身、患者さんや家族に何かを提案した場合、やはり聞き入れて欲しい。そうした方が一番プラスになると思う提案をしてるからだ。ただそれを無理強いはしない。人の価値観は人ぞれぞれ。何がプラスかは考え方次第だ。また、中には不合理と分かっててもそれをせざるを得ないという人もいる。損すると分かっていてもギャンブルを辞められない人、酷い目に遭わされると分かっていてもダメな交際相手に惹かれる人とかね。私自身、なかなか優勝できないと分かっていても阪神を応援している。例えば巨人ファンに「阪神って何回優勝したんですか?巨人ファンになった方が楽しいですよ。」と言われたとしたら、「理屈ではそうかもしれないが、俺は阪神が負けて愚痴るのも1つの楽しみなんだよ!今更、他のチームの応援もできないし!」と答えるだろう。意外と不合理と分かっていても、なかなか変えられない人間というのはいるもんだ。ただし、その決断は尊重する代わりに、うまくいかなかった場合のリスクも背負ってもらう。私の提案通りに動いている人に比べると、ある程度の不自由は許容してもらうし、今後同様の場面になった時は「今度は自分の提案に乗って欲しい。」と強めに言うだろう。

 

 

前置きが長くなったが、Bさんは自分より少し先輩。一生懸命なのは分かるが、それが空回りしてるのは何となく分かる人だった。この人は何が問題かと言うと、自分の思い通りに患者さんが動いてくれないと、嘆くし、下手すりゃ泣くのである。「私はこんなに一生懸命にやってるのに、◯◯さんは全然分かってくれない。」と。まず一生懸命やるのは当たり前であり、そんな事患者さんとは何の関わりはないというツッコミは置いとくとしよう。患者さんが自分の提案に乗ってこないのを残念がるのは分からないでもないが、何故泣く程辛いのかが分からない。人ぞれぞれの価値観なんだから、その通りにやらせてあげたらいいのである。そんなに抱え込むというのは、一見優しい医者に見えるかもしれないが、前回のAさん同様見せかけの優しさだと思う。患者は医者の言う通りに動くべきだという傲慢さが潜んでいるように思えてならない。また、それでしんどくなるというのも何か間違っていると思う。